顧問先に「ちゃんとやってください」と言い続けるより、続く道具を一つ渡すほうが、結局は早い——。
この記事の結論
顧問先支援とは、頑張らせることではなく“続く道具”を一つ渡すこと。結果として、事務所も顧問先も、両方がラクになります。
これまでの記事で、記録が続かない理由と、記帳代行が赤字になる顧問先の特徴を見てきました。どちらも根っこは同じで、記録の“入口”に仕組みがないこと。では、会計事務所の側から何ができるのか。今回は、現金商売の顧問先を支援する具体的な方法を考えます。
まず、事務所側に起きること
顧問先がその場で記録したデータが、整った形で届くようになると、事務所の仕事はこう変わります。
- 日々の売上伝票を一枚ずつ入力する作業が、いらなくなる。入力コストが減り、転記ミスも減るので、正確性も上がります。
- 数字がリアルタイムで見える。これまで「先月分」を月次でまとめてから助言していたのが、“今の数字”を見ながら話せるようになります。経営改善のアドバイスをしても、その成果が1ヶ月後ではなく、すぐに確かめられる。
顧問先(店)にも、こんな変化が起きる
ここが大事なところで、事務所がこの仕組みを勧めると、顧問先自身にも良いことが起きます。だから「勧める価値がある」と言えるわけです。
- 入力がかんたん。スマホ片手に、空いた時間にその場で。だから続く。
- オーナーが店にいなくても回る。スタッフがその場で記録できるので、現場の売上がそのまま正確に残ります。管理が行き届き、安心につながる。
- 粗利がすぐ分かる。売上レポートで、月の売上と人件費がひと目で見える。「使いすぎ」「ここは強い」という経営感覚が育ちます。
- スタッフ別の売上が見える。現場の励みになり、健全なやる気につながります。
- 成果報酬(歩合)の管理がラク。「誰にいくら」を毎回手で計算しなくてよくなります。
「支援する」とは、頑張らせることではない
顧問先支援というと、つい「もっとちゃんと記録してもらう」方向に考えがちです。でも、続かない人に頑張らせても続きません。事務所ができる一番効く支援は、続く道具を一つ渡すこと。入口さえ変われば、記録は自然に積み上がります。
結果として、事務所の手間が減り、顧問先は自分の数字が見えるようになる。両方がラクになって、関係も良くなる——これが、現金商売の顧問先支援のいちばん現実的な形だと考えています。
よくある質問
Q. オーナーが店にいないとき、スタッフに入力させて数字はちゃんと正確になりますか?
はい。スタッフがその場で記録できるので、オーナーが現場にいなくても、売上がそのまま正確に残ります。あとからの記憶頼みの入力がなくなるぶん、むしろ正確になり、管理も行き届きやすくなります。
Q. 数字がリアルタイムで見えると、どんなアドバイスができますか?
正直なところ、「これが正解」と言い切れるアドバイスはありません。経営は仮説と検証のくり返しだからです。リアルタイムで数字が見えると、その検証がぐっと速くなります。たとえば「この曜日は人を増やしてみよう」と試した結果を、翌月を待たずに確かめられる。だから顧問先と一緒に、小さく試しながら進められます。